男性なら誰しもが気にする「育毛」
多くの育毛剤が市販されていますが、実際にはどの成分が有効で何を選べば良いのか分からないという方も多いと思います。
育毛については多くの研究がされており、それらの論文や文献(1)を参考に育毛剤の有効成分やその効果について紹介していきます。
医薬部外品の育毛薬剤について
育毛剤市場は医薬品と医薬部外品がほぼ同列で販売されている珍しい市場です。
医薬部外品の育毛剤は主に予防という観点で販売されています。
また、女性はフィステナリドの使用が禁止されているため、女性の薄毛対策のために有効という側面も持っている。
育毛薬剤について
育毛薬剤は大きく分けて医薬品と医薬部外品に分けられる。
代表的な医薬品成分としては、ミノキシジル、フィステナリドがあります。
一方で医薬部外品の育毛用薬剤の有効成分としては、多くの薬剤が承認されています。
しかしながら、人での有効性を確認した薬剤は限られています。
試験の有効性評価には直接毛髪に効果を与えることを確認した「直接的作用効果」を確認した薬剤と、間接的に毛の成長に関係する効果を作用機序としている「間接的作用効果」を確認した薬剤に分けられます。
男性型脱毛症診療ガイドライン策定委員会は,2010 年に日本皮膚科学会と毛髪科学研究会の共同事業として,「男性型脱毛症診療ガイドライン(2010年版)(2)」を発表しました。
さらに2017年に本ガイドラインは改定され(3)、その中にこれまで紹介してきた有効成分がいくつか集約されています。
そのガイドライン内では、有効成分の推奨度によってA,B,C1,C2,Dの5段階評価がされており、ミノキシジルやフィステナリドといった医薬品がAに分類されています。
医薬部外品ではアデノシンがBに分類され、t-フラバノン、サイトプリン、ペンタデカン酸グリセリドがC1に分類されています。
男性の薄毛と女性の薄毛について
薄毛に悩む男性は多いですが、実は、薄毛に悩む女性も少なくありません。
一口に薄毛と言っても男性と女性では、進行の様子が異なる。男性の薄毛の見た目の特徴は、頭頂部において重点的に薄くなりやすい事が知られているが、女性では頭部体的で薄毛が進行し、男性のように局所的には起きにくいという特徴があります。
日本人男性の薄毛についての研究(4)では、外観上薄毛程度が異なる男性の毛髪密度を測定しており、毛髪密度は薄毛の程度によらずにほぼ一定であることが報告されています。
さらに詳細に薄毛の影響を確認するために、薄毛進行度が高い方と低い方で毛髪の直径を測定し比較したところ、
■薄毛進行度の低い方:105 μm
薄毛進行度が高い方が明らかに毛髪の直径が小さくなっていた。
つまり、薄毛のは主要な原因の一つは、1本あたりの毛の太さが細くなってることに起因すると考えられます。
一方で、女性の薄毛については、毛密度の減少と毛が細る両方の原因によるものと結論付けられています(5)。
その傾向は40歳を超えてから顕著に現れ、毛髪密度の低下が見られたというところが男性脱毛症とは異なる点である。
そのため、男性用育毛剤では毛を太くする有効成分がよく、女性用育毛剤では毛を太くする成分と発毛成分が両方配合されている方が望ましい。
各メーカーの有効成分について
これまでの説明で、各メーカーから有効成分が多く配合されている旨を説明してきました。
特に男性型脱毛症診療ガイドラインの中で、推奨度の高い有効成分(アデノシン、t-フラバノン)について、各メーカーから公表されている内容を紹介していきます。
t-フラバノン (花王)
まず紹介するのが、花王の製品に配合されている有効成分「t-フラバノン」です。
公式HP「」にも有効成分に関するデータが示されており、安心して使う事ができます。
公式HPより
毛乳頭細胞で産生されたTGF-βというタンパク質が、毛母細胞に作用してその分裂・増殖を抑制し、髪の成長を抑えます。
t-フラバノンは、TGF-βの活性を抑制することが確認されており、ヘアサイクルが退行期・休止期に誘導されることを抑え、成長期を維持できるように働くと考えられます。
この他、実際に毛母細胞が増殖している様子や髪の毛の成長が早くなることを確認しており、高い効果を証明しています。
この成分を配合した商品が「バイタルチャージ」です。
有効成分以外にも頭皮環境を整える成分が配合されており、頭皮環境を整えながら育毛することができます。
アデノシン (資生堂)
続いて紹介するのが先ほどのガイドラインでも推奨度が高かったアデノシンです。
毛乳頭に直接作用して、毛髪の成長に不可欠な「成長促進因子」を産出し、発毛を促します。
実際にヒト試験でその有効性が確認されており(6)、男女を問わず毛が太くなることで薄毛改善への効果があります。
アデノシンを配合したアデノゲンシリーズの育毛剤が市販されており、男女を問わずおすすめです。
<まとめ>
今回は育毛剤の有効成分について紹介しました。
多くの方が抱える悩みであるからこそ、正しい知識を身につけて早めに適切な対応を取っていきたいです。
適宜最新情報を更新していこうと思います。この記事が少しでも皆さんの参考になれば幸いです。
参考文献
(1) 育毛薬剤の開発と評価方法(これまでと今後) https://www.jstage.jst.go.jp/article/koshohin/42/2/42_420204/_pdf
(2)男性型脱毛症診療ガイドライン策定委員会:男性型脱 毛症診療ガイドライン(2010 年版),日皮会誌,120: 977–986, 2010.
(3)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン作成委員会:男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年 版,日皮会誌,127: 2763–2777, 2017.
(4)Ishino, A., Takahashi, T., Suzuki, J., Nakazawa, Y., Iwabuchi,T., Tajima, M.: Contribution of hair density and hair diameter to the appearance and progression of androgenetic alopecia in Japanese men. Br. J. Dermatol., 171: 1052–1059, 2014.
(5)Tajima, M., Hamada, C., Arai, T., Miyazawa, M., Shibata, R., Ishino, A.: Characteristic features of Japanese women’s hair with aging and with progressing hair loss. J. Dermatol. Sci., 45: 93–103, 2007.
(6)女性の薄毛とアデノシンによる改善効果 https://www.jstage.jst.go.jp/article/sccj/45/1/45_35/_pdf